AI導入前に「偽りの労働」を排除すべきとチョン・ドヒ前副社長が指摘
AI技術の急速な発展に伴い、企業の働き方も根本的な変化を迫られている。SKTのチョン・ドヒ前副社長は、技術導入の前に「偽りの労働」を排除し、組織文化やリーダーシップを刷新する必要があると指摘した。
チョン・ドヒ前SKT副社長は、AI導入の前に「偽りの労働」を特定して取り除くべきだと指摘した。同氏は、AIの活用により週に1つで済むはずの無駄な報告書が10個に増える可能性があると警告し、組織の評価制度や文化といった「旧型OS」の刷新が必要であると述べた。
人工知能(AI)技術が急速に発展する中で、企業の働き方も根本的な変化を迎えている。しかし、技術の導入速度に対し、組織のオペレーティングシステム(OS)が過去のまま停滞しているとの指摘がある。最新のスポーツカーを購入しても、道路網が荒れていたり信号体系が古かったりすれば、スピードを出せないのと同じ理屈だ。
T Times TVが伝えたこの対談において、チョン・ドヒ前SKT副社長は、AI時代の核心的なキーワードとして「偽りの労働」の除去と「雑談」の価値を挙げた。同氏は、技術そのものよりも、技術を受け入れられる組織文化とリーダーシップの変化が先行されるべきだと強調した。
AI導入の前に「偽りの労働」を排除すべき…逆転する技術適用
多くの企業がAIを導入する際、「いかに業務を自動化するか」を検討する。しかし、チョン・ドヒ前副社長はこの順序が間違っていると指摘する。AIを適用する前に、まず何が「偽りの労働」であるかを把握し、それを排除するプロセスを優先すべきだというのだ。
同氏は「AIを使えば、週に1つ作れば済むはずの無駄な報告書を、10個も多く作ってしまう可能性がある」とし、「偽りの労働が何であるかを確認してまず取り除くことを先行させた後、その空いた場所にAIをどう活用するかを決定するのが正しい」と述べた。つまり、目的もなくハンマーを振り回すのではなく、排除すべき問題を先に定義した上で、道具としてAIを使用すべきだという論理だ。同氏は、多くの企業の経営陣が外部のAIブームに刺激され、主客転倒した方式でAIを導入する現象を警戒すべきだと付け加えた。
こうした変化を阻む最大の障害の一つは、硬直化した組織体系だ。チョン・ドヒ前副社長は、組織とリーダー、個人が共に変わらなければならないと強調し、そのうちの一つだけが変わっても、残りが元の状態に引き戻す現象が発生すると説明した。例えば、個人がAIによって報告書の作成時間を短縮したとしても、既存の複雑な報告体系や会議文化がそのままなら、業務効率の改善は実感できない。また、リーダーが新しい試みを奨励しても、年末評価制度が過去の方式(失敗を許容しない評価)に留まっていれば、組織は再び過去の慣性へと回転してしまう。同氏は、現在の年間の事業計画、予算配分、KPI(重要業績評価指標)制度などが、AI時代の新しい試みには適合しない「旧型OS」である可能性を指摘した。
データの共有を巡る組織文化の問題についても言及された。データ専門家として、同氏はデータそのものよりも、データを解釈し活用する能力が競争力であると強調した。特にエージェント時代には、データがエージェントの「糧」や「餌」となるため、データの共有は不可欠だが、現実には部署間のデータ共有が円滑でない場合が多い。データを精製し共有するプロセスに対する評価が不足していることや、データを供給したチームが逆に相対評価で不利益を被る構造的な問題が、データ共有を阻む要因であると分析した。
「未来の真の労働は雑談」…AIが代替できない「文脈の解釈」
AIが調査、コーディング、報告書作成などの定型業務を迅速に遂行するようになるにつれ、人間の役割は「雑談」と「創発」へと移っていく見通しだ。チョン・ドヒ前副社長は、AI時代に人が必ずつかんでおくべき領域として、「文脈の解釈」と「アイデアの拡張」を挙げた。
同氏は「AIはファクトを把握し事実を整理することには長けているが、わが社の特殊な状況や文脈に合わせて情報を解釈し、インサイトを導き出すことは人間の役割だ」と説明した。同じデータであっても、「わが社では今このタイミングでこのように報告すべきだ」という判断は、AIが遂行しにくい領域だという。同氏は執筆を例に挙げ、単純な「伝達」のための執筆はAIに任せられるが、自身の考えが変化し拡張していく「思考の拡張」としての執筆は、主導権を持つ人が直接行うべきだと区別した。
特に同氏は、同僚と交わす「雑談」の重要性を説いた。廊下ですれ違った同僚との短い会話や、一杯のお茶を飲みながら交わす意見交換は、AIが学習できない現場の生々しい情報や異論を含んでいるからだ。こうした雑談の中から新しい視点が生まれ(創発)、それを基にAIへ再び問いかけながらアイデアを発展させる過程が、未来の核心的な業務になるとの分析だ。同氏は、こうした雑談を通じて得たアイデアをもとに、「AIに一度調査させてみよう、実験してみよう」と提案し、AIと協業する方式を提示した。
これに伴い、未来のオフィスの風景も変化するものと見られる。モニターの前に座って個人の業務に没頭したり、別途の会議室で形式を重んじたりする構造の代わりに、広くオープンな空間で自由に雑談し、ホワイトボードにアイデアを書き留めるカフェのような形態の空間が増えるだろうと予測した。ただし、雑談の効率を高めつつも業務の深さを維持できるよう、隅々には一人になれる空間が共存する形態が望ましいと付け加えた。
指揮者ではなく「清掃員リーダーシップ」が必要な理由
変化する環境の中で、リーダーの役割も根本的に再定義されなければならない。過去のリーダーが構成員に業務を指示し調整する「指揮者」であったなら、AI時代のリーダーは構成員が業務に集中できるよう障害物を取り除いてくれる「清掃員」になるべきだという。
チョン・ドヒ前副社長は「リーダーシップは、構成員たちの前後で障害物を取り除いてあげる清掃員リーダーシップになるだろう」とし、「一つひとつ教えて指示するのではなく、構成員が新しい試みができる環境を作ることが核心だ」と述べた。
また、同氏はAIと単独で仕事をする際に発生し得る「確証バイアス」の危険性についても警告した。AIと対話しながら業務を処理していると、AIが提供する論理に埋没し、考えが一方に偏ってしまう可能性があるという。同氏は「AIと対話すれば、どうしても自分の対話がAIを連れてきてしまう」とし、AIとの対話によって速度と品質は向上したものの、かつて同僚と議論して考えのバランスを取っていた過程が失われることで、確証バイアスが深刻化する恐れがあると懸念した。これを防ぐためには、同僚と絶えず議論して自身の考えを検証し、AIが与えることのできない人間的な相互作用を通じて思考のバランスを取る過程が不可欠である。
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