AI演算力の鍵を握る「冷却」技術、市場規模は2034年に544億ドルへ
AI競争の本質は演算力の争いだが、土地・チップ・電力の確保には物理的限界がある。T Times TVの分析によると、冷却効率の向上が演算力を引き上げる唯一の技術的突破口となる。
AIインフラへの巨額投資が進む中、チップの熱制御が演算力向上の突破口として注目されている。2034年には冷却市場が544億ドル規模に急成長する見通しで、石油会社や電力機器メーカーなど産業の枠を超えた覇権争いが起きている。
AI競争の本質は、結局のところ「誰がより多く計算できるか」の戦いである。このため、ビッグテック企業は巨額の資金を投じてデータセンターを建設し、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を確保し、電力を引き込んでいる。アメリカのビッグテック企業は、2025年の1年間だけでAIインフラに約3,200億ドル(約426兆ウォン)を投じた。しかし、土地やチップ、電力を即座に増やすことは現実的に不可能に近い。データセンターの立地問題でプロジェクトが頓挫したり、電力網の構築だけに数年を要したりするなど、物理的な限界が明確であるためだ。
T Times TVが伝えたこの分析によると、こうした制約条件下で演算力を引き上げることができるほぼ唯一の技術的突破口は、「冷却」である。冷却効率を高めることで、3つの側面で利益を得られる。第一に、冷却に費やしていた電力を計算により多く投入できるようになり、電力使用効率(PUE)が改善される。第二に、熱を効果的に逃がすことで、同じ面積により多くのGPUを密集して配置できるようになり、土地の効率が高まる。第三に、チップが過熱によって性能を低下させる「スロットリング」現象を防ぎ、チップの性能と寿命を最大化できる。
ヘアドライヤー600台分の熱に耐えるAIラック
AIデータセンターの発熱問題は想像を絶する。NVIDIAの最新GPUであるBlackwell(B200)は、チップ1個あたりの消費電力が1,400ワットに達し、まもなく発売されるRubinチップは1,800ワット以上を使用する見込みだ。これは、手のひらサイズのチップ1個が、家庭用ヘアドライヤー1台を最大出力で稼働させたときと同等の熱を放出することに相当する。問題は、こうしたチップが数百個も収容される「ラック(Rack)」単位の熱量である。次世代AIプラットフォームのラック1台が放出する熱は1メガワット(MW)に達すると予想されており、これはヘアドライヤー600台を同時に稼働させるのと同等のレベルである。
現在、最も広く使われている方式は、空気(Air)を利用した「空冷式」である。しかし、空気は熱を運ぶ能力が非常に低い。より多くの熱を冷やすためにファンをより強く回転させる必要があるが、この過程で膨大な電力が追加で消費される。まるで真夏のサウナの中で数百台の扇風機を回して涼しくなるのを待つような、非効率が生じる。結局、空気だけでは爆発的に増加するAIチップの熱を制御できない限界点に達しているとの分析が出ている。
液浸冷却とNVIDIAの主導権争い
空気の限界を克服するため、液体を活用した冷却技術が注目を集めている。水は空気よりも約3,500倍多くの熱を吸収できる。技術方式は大きく3つに分けられる。サーバーの背面に冷たい水が流れるコイル板を取り付ける「リアドア熱交換器(RDHx)」、GPUの上に金属冷却板を取り付けて冷却水を流す「直接冷却(D2C)」、そしてサーバー全体を電気を通さない特殊な液体に浸す「液浸冷却」である。
特に液浸冷却は、PUEを1.05の水準まで下げることができる強力な技術だ。しかし、NVIDIAは現在、自社GPUサーバーに対してD2C方式は公式にサポートしているものの、液浸冷却についてはまだ認証していない。これは技術力の問題というより、「主導権」の問題であるとの見方が支配的だ。D2CはNVIDIAが設計したサーバーに冷却業者がエアコンを取り付ける形態であるため、NVIDIAの設計権限が維持される。一方、液浸冷却は冷却方式に合わせてサーバー全体を新たに設計する必要があるため、冷却業者がサーバー製造市場の主導権を握るリスクがある。ただし、ラック1台あたりの電力密度が1MWに迫る状況になれば、NVIDIAも液浸冷却を無視することは難しくなると見られる。
石油会社から電力機器メーカーまで、冷却市場の覇権争い
冷却市場は、データセンターの付帯設備を超え、独立した成長産業へと進化している。世界のデータセンター冷却市場は、2025年の約188億ドルから2034年には544億ドル規模へと、3倍近く急成長する見通しだ。この市場の主要プレーヤーとしては、NVIDIAと密接に協力しリファレンス設計を主導する「Vertiv」、ソフトウェアプラットフォームによって顧客を囲い込む「Schneider Electric」、そして大型冷凍技術を保有する「Johnson Controls」などが挙げられる。
興味深い点は、冷却技術の変化が産業の境界を壊していることだ。液浸冷却の核心である「電気を通さない特殊な冷却油」を作る上で最も有利なのは、石油を精製する石油会社である。これに伴い、ShellやExxonMobilといったグローバル企業はもちろん、韓国国内のSK EnmoveやGS Caltexといった石油会社も、AIインフラ市場の主要プレーヤーとして浮上している。電力機器企業のEatonや水処理企業のEcolabまでもが加わり、AIインフラの覇権はGPUの確保を超えて、「誰がより効率的に熱を制御できるか」へと移りつつある。
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